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衛星の打上げで、火星探査などの人工惑星となって、地球の重力圏を脱するときは、放物線又は双曲線の軌道をとるが、人工衛星として地球を回るときには楕円軌道、又はその特殊な場合として離心率がOの楕円である円軌道となる。
人工衛星の軌道は、上記の法則に基づいて、ケプラーの軌道の6要素、地球の中心を原点とする直交座標系上での三次元の位置と速度などで表すことができる。直交座標系での表現も三次元の位置と速度で六つのデータで表されることになる。

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ケプラーの軌道の6要素は、次のとおりで、それらは図8・1に示してある。まず、衛星軌道の楕円と、その楕円上の位置を示すのに三つの要素が必要である。すなわち、楕円の大きさとその形は、軌道長半径aと離心率eで規定され、その一方の焦点に地球の中心がある。この楕円の軌道上で地球に最も近いところを近地点、最も遠いところを遠地点と呼び、遠地点と近地点の距離の1/2が軌道長半径ある。ケプラーの第2法則から分かるように、衛星はこの軌道上を等速度で動いているのではないが、そめ楕円軌道上の位置を示す要素が図では平均近点離角Mとなっていおり、この要素にはいろいろな変形がある。衛星が楕円軌道を一周する周期Tは、第3法則から、

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であるから、Aから求められる。近似的に

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である。このTを用いて、M=(2π/T)(t−tp)で、tは現在の時間、tp衛星が近地点を通過した時間で、Mの代りに近地点通過時間tpを要素の一つとして使用することもある。こうして、Mは角度を示しているが、平均値であって実体のある角度ではない。これに対して、楕円の中心において、衛星の位置と近地点とのなす角を離心近点離角Eといい、M=E−esinEの関係がある。これで、ある時間tにおける軌道楕円上の衛星の位置が決まる。
残りの三つの軌道要素は、この楕円軌道と地球との関係である。図を参照しながら見ていくと、軌道傾斜角iは、楕円軌道面と地球の赤道面とのなす角、昇交点赤経Ω(地球の軽度を使用することもある)は、軌道楕円面が赤道面と交わるところの赤経、すなわち、軌道の経度方向の向き、最後に、近地点引数ωは、地球中心における楕円軌道の近地点と昇交点のなす角で、地球に対する楕円軌道の長軸向きで、これで楕円軌道と地球の関係が決まり、任意の時間における地球に対する衛星の位置が求められる。

 

 

 

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